読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ハイヒールとは

レポート・論文

 f:id:UbuHanabusa:20150928033746j:plain

 

はじめに

 ハイヒール、それは誕生と同時に多くの人々を魅了し続けている。私もその一人である。今回はそんなハイヒールの魅力を紐解きたいと、様々な方面からハイヒールをレポートすることを試みた。

 

1. ハイヒールの歴史

 今まで一度も、どんな履物も身に付けたことがないという人が今この地球上にどれほどいるだろうか。文化や文明、また形状・素材・製法、使用の頻度・目的に違いはあれ、どの地域にも履物は存在している。

 現代、靴は私達生活の中で欠かす事の出来ない履物である。どれほど昔から人類は履物を身に付けてきたのたのかは定かではない。現存する最古の靴は2008年にアルメニアの洞窟で発見された紀元前350年ごろの革の紐靴とされている。

 履物は大きく分けて、足の2本の指で鼻緒を挟むものと、足を包むものに分かれる。靴とは、履物の一種で、足を包む形のもの。サンダルのように靴底以外は紐や帯で固定するものもあるが、多くは足を完全に覆うことで固定する。 どのくらいまでを靴とするかは、一般的に足の甲の部分が1/3以上覆われ、かかと部分が固定される形状を靴とみなす。

 また、エジプトのピラミッドからは、紀元前2500年ごろの鼻緒の付いたサンダル形態の物が発掘されている。しかし、発見されていないだけでさらにもっと昔から履かれていたとしても不思議はないだろう。

 ヒールの靴の誕生は紀元前400年代。アテネの遊女間で背を高く見せるハイヒールが流行したことからである。

 そして1570年頃、ルネッサンス期のヴェネツィアチョピンというイスラム風ハイヒールが高級娼婦の人気を得るが、当時は靴までも覆うほどのロングスカートが流行しており、当時の絵画にもほとんどチョピンの姿は描かれていない。このチョピンという靴は非実用的で、その存在意義はこれを履いた人を目立たせるところにあったようだ。絹やビロードで飾られ、銀のレースで彩られたこの靴のかかとの高さは18センチもあり、とても高価であった。現存するチョピンはごくわずかな美術館に収蔵されている。

 そして1600年代、ついに現代のハイヒールの原型がフランスのパリで発祥したと言われている。

 当時のパリは下水の設備が無く、ゴミや糞尿等の汚物を路上に捨てていた。そのため汚物を踏んだり衣服の裾を汚さない様に爪先立ちで歩くことが常であった。しかしその状態で長時間歩くのは酷なため、踵の下に添えを付けたことが始まりだそうだ。(男性のマントは汚物を捨てられた際の飛び跳ねよけで使われていた。)

 また、太陽王と呼ばれたルイ14世は、このハイヒールを履いたときの背筋が伸び、脹脛がキュッと上がる姿を「究極の脚線美」と褒め称え、男女を問わず舞踏会などではハイヒールを履かせていたそうで、当時の男性の正装を半ズボンにしたほどの気に入りぶりであった。そして自身も脚線美を競うためにハイヒールを履いていた。その名もルイヒール。ルイ王朝で愛用されたこの靴こそが、ハイヒールの原型である。

 しかし、フランス革命が終わりナポレオン戦争が始まると、男性は実用度重視の靴を履くように。男性は機能性を重視し、女性はファッション性を重視し、男性は踵の低いブーツタイプに移行。男性はハイヒールを履かなくなってしまった。女性は更に踵を上げ先を細くしたピンヒールか、同時に爪先にも厚みを付けた厚底ヒールが生まれていった。

 ハイヒール熱がまた盛り上がってきたのは、19世紀の中頃、ポルノの高まりとともにである。その頃から女性用のハイヒールのパンプスはどんどんとポピュラーになっていくのだった。

 1960年代、70年代になると冒険的なファッションをする男性たちが登場。歌手のデヴィッド・ボウイがハイヒールを履いて歌う姿などは、さぞかし世界中に衝撃を与えたことだろう。今では、男性モデルがハイヒールを履くのは当たり前の時代になった。ランウェイ・ウォーキングのコーチであるジェイ・アレキサンダーは、すべての若手男性モデルたちにハイヒールでの歩き方を教えている。

 

2.ヒール靴の種類

 一口にヒール靴といっても様々な種類がある。時代や地域によって形状の異なるものごとにそれぞれ名称が付いている。ここではヒール靴の種類を現代の代表的なものから挙げてみようと思う。

 

ハイヒール:ヒールが高いものをハイヒールと呼んでいたが、正しくはハイヒールパンプスと呼ぶ。ヒール7センチからがハイヒールの条件である。

ピンヒール:1950年代に登場したシャープでモダンな「究極のヒール」。強度のあるスチールが開発され、今にも折れてしまいそうな、細いヒールが誕生した。ヒールが細くて高いものをピンヒールと言う。また底の面積が少ないものをスパイクヒールと言う。

チャンキーヒール:すごく分厚いヒールのことをチャンキーというブーツやパンプスなんにでも使えるチャンキーとは「ずんぐりした」という意味。普通のハイヒールの場合はヒールの部分が直径7ミリメートル程度の細さであるが、チャンキーヒールは直径2~3センチメートルの太さであり、より安定感がある。

メリージェーン:メリージェーンは、ストラップシューズの一種を指す用語であり、その典型的な形は、踵が低く、つま先は閉じられ、甲の部分に飾り留め金が通ったものである。多くは黒のエナメル革で作られていた。慣例的に主に少女が使うものとされているが、歴史的にみると少年もよく使っていた。また、現代では、少女が履いた場合はフォーマルととられ、成人女性が履いた場合はインフォーマルであるととられる。

オープントゥ:主にパンプスなどで、つま先があいている形状のことを指す。つま先だけが開いていることなので、足を包む部分が極端に少ないサンダルなどにはあまり用いない。

スリングバック :または、オープンバック後ろが開いていて、踵をひっかける紐がある。かかとが覆われていないので、靴が脱げないようにかかとの少し上にバックベルトをかけて固定する。ベルトの美錠はスナップボタン・カンもしくはゴム式になっている。

セパレート :サイドオープンパンプスともよばれる。つま先・かかと部分が覆われており、側面が開いているパンプス。足首下にバックベルトをかけて固定するものが多い。ベルトの美錠はスナップボタン・カンもしくはゴム式になっている。

ミュール :ヘップサンダルとも言う。サンダルとの違いは、かかと部分が大きく開いている(カットされた)デザインであること。 コールガールが寝室で履いていた履物であるため、正装には向かない。

 

 工業中心の産業が終焉し情報化産業が牽引する後期資本主義の時代にはいり、女性用ヒール靴パンプスの種類は一気に豊富になる。資本の飛躍的肥大欲望の肥大に歩調を合わせ、ヒールを1センチ高くすると市場規模が 10% 拡大するという時代があったのだ。

 1920年になると、初めてドレスのスカート丈が短くなり、女性の足元がスカートの外に出るようになる。それによって、この時代一番のセックス・アピールポイントである足を美しく見せたいという女性の欲求がハイヒールの靴を数多く生んだのは当然と言えるだろう。

 足を傷めるだけ傷めても、なおヒールに「美しさ」を求める女性はどの時代・地域にも絶えず存在していた。次は、世界の歴史上のヒール(踵の高い)靴を紹介していこうと思う。

 

パトン:これは中世に使われた靴をはいてからさらに履く靴である。ひどい泥の道路を歩かなければならない場合のレインシューズや靴カバーのようなもの。

カバやシナノキ、リンデンなどの樹皮を使って編まれたものもあり、ノルウェースウェーデン、およびロシアなど国によって独特の製法があったようである。

ブライダル・シューズ:この靴の歴史は9世紀にまでさかのぼり、フランスのアリエージュの村娘がムーア人に誘拐された時、木靴の先で敵の心臓を貫き無事助かったことから、花嫁がはく木靴の先端を鋭く、長く作ったのが始まりと言われている。靴の先が高い位置にあればあるほど花嫁への愛が深いとされる。

ロータス・シューズ(纏足):かつて中国で行われていた「纏足(てんそく)」は、女性の足は小さくあるべきという美意識のもと、足が発達しないように布などをまきつけて足を無理やり小さく変形させるという風習である。中国北部、特に北京で使用されていた靴は弓のような形状をしていて、靴底が大きなカーブを描いていたそう。 19世紀後半~20世紀初頭にかけて、普通の大きさの足に合う靴が女性の間で使われるようになっていったといわれており、纏足用の靴は次第に廃れていったが、すでに纏足を施されていた女性たちのために、Zhiqiangの靴工場が1991年にロータス・シューズ(纏足用の靴)を生産ラインナップに加えたところ、2年で2000足以上の靴が売れていったとのこと。しかし、昨年からは特別に注文を受けた場合にのみ生産するような方針に転換した。

カブカブ:カブカブと呼ばれている銀のスタッズがついた竹馬は、中東の女性がぬかるんで汚れた道や浴場で自分が汚れたりぬれたりしないように使われていた。お金持ちのそれは真珠で装飾されていたよう。この「カブカブ」という名前は、大理石の上を歩いた時に靴が出す音に由来している。

おこぼ:日本の舞妓さんが履くおこぼは、装飾目的のものではなく高価な着物を汚さないためという実用的な目的に使われる。鼻緒の色は舞妓さんのステータスによって違い、新米の舞妓さんは赤色で、見習いを終えた人は黄色の鼻緒のものを身につけている。ぽっくり、木履、こっぽり下駄、おこぼ等々、呼称は地方によって異なる。もとは、日本の町方の子女の履き物。舞妓や半玉、花魁や太夫につく「かむろ」の履き物でもあり七五三のお祝い履きにも使われる。最近では、結婚式や成人式にも用いられる。正式には、表と呼ばれる(竹の皮を編んだもの)ものが上面についている。

魁道中下駄:文化・文政時代三枚歯の下駄が庶民の間で大流行したのが始まりである。男性でも黒塗りの三枚歯下駄を履いていた。表を付けず全体を黒く塗ったものが元祖。花魁道中下駄は、延享のころ、京都島原の花魁が下駄職人に特別に誂えて用いたのが最初と言われている。またある文献には、宝暦より約百年前の万治年間に角町菱屋の芙蓉が三枚歯を用いたのが始まりであるとも言われている。享和になってから江戸の越前屋の和国という妓が三枚歯は、古風だと言って、角の二枚歯にしたともある。高さ約25cm・重さ約4kgの木製の下駄であり、既に鬘と衣装で20kg以上を身につけた上に、下駄4kgで花魁独特の八文字で練り歩く訳だが、これがまた、想像を絶する至難の業である。歩き方は、江戸の外八文字、島原の内八文字の二通りがあって、足を外から内側へ廻し、爪先を詰めて踵が自然に八文字形に開くのが内八文字。正面を向いて横を見ず、目は、常に足と平行に、手を懐に、足を左より進めその位置を中心として、左方に半弧形を書きながら踵を下に下ろして、次に履物を下ろす。という具合に歩行をした。道中には、鳶の者二人が金棒を曳いて先に立ち、続いて妓楼の若者が遊女の定紋入りの提灯をさげて続き、太夫は三枚歯の駒下駄を八文字に踏んで蓮歩を進め、前に振新二人、横にカムロ二人、後ろに番新二人が長煙管と煙管盆を持って従うという形で、江戸中期ころまで行われていたとある。

 

 いつの時代も、ヒール靴は女性の他を凌ぐ美しさと高貴さの象徴であったことが窺える。女性が求める一番美しくてセクシーなスタイルというのが、現代の細くて高いハイヒールではないかと思う。20世紀の女性は、いろんなヒールを履きながら、最終的にはピンヒールのハイヒールを履いて、美しく、格好よく歩くことを願ってここまで来たのかもしれない。

 ハイヒールの似合う女は、今も昔も変わらず「いい女」とされる。踵から親指に重心を移すように正しく歩くことで、軽くカツカツと鳴る心地いいハイヒール独特の靴音は、女性としての自覚を呼び覚ます音だと言えるかもしれない。

 

3.ハイヒールと性愛

 ハイヒールはセクシュアルな履物であると言われる。そこに男女問わず魅了するハイヒールの魅力があるのではないかと思い、私はハイヒールのもつセクシュアリティをいくつかの例を用いて解明していこうとおもう。

 画家ルーベンスによって描かれた『ヴィーナスとアドニス』(1638年頃)を見てよう。

 この絵は、ギリシア神話のエピソードの一つである、下界の男アドニスに恋をした愛欲の女神ヴィーナスの悲恋を描いている。画面の中で、去ろうとする男を女が必死に引き留めている。このヴィーナスの温もりある白い肌や、腰をくねらせ頬を染め、膝を擦り合わせる媚を含んだ所作は、とても扇情的である。

 f:id:UbuHanabusa:20150928000156j:plain

 ここでヴィーナスの足に注目すると、その親指が第二指へ不自然に曲がっており、明らかに外反母趾であることが分かる。全裸に裸足である神話の女神ヴィーナスが、なぜ外反母趾になっているかというと、ルーベンスのモデルが外反母趾だったのだ。この時代はルイヒールが流行しており、長期にわたりヒールを履き続けた為に外反母趾に悩まされる女性が多く存在していた。しかし、この曲がった親指はヴィーナスの性的魅力を増大させるのに一役買っている。

 足指と性の関係については、かの有名な画家カバネル作ヴィーナスの誕生』(1863年)を見ると分かりやすい。このヴィーナスは波飛沫からたった今誕生したにもかかわらず、どこか気だるげな倦怠感を漂わせており、口元の微笑や流し目からは満足感さえ感じられる。この絵を見たひとが、これは情事後すぐの彼女なのではないかと疑問を抱くほど官能的だ。

  f:id:UbuHanabusa:20150928000503j:plain

 ヴィーナスの反り返った足の親指を見てみると、その疑問が正解であったことが証明される。反り返える等して力の入った足指は、性行為中の女性のシンボルなのだ。

 ハイヒールをオーガズム・シューズともいう。ハイヒールに足いれすると、足部は低屈し、足趾は屈曲し、下腿三頭筋の腓腹筋部の収縮・緊張を促し、あたかもオーガズムと同じ足・下肢の様相をとるためである。

 ハイヒールの構造上、足の甲が靴に覆われていないのは「脚」の部分を増やし魅せるためである。では、なぜ「脚」か。それは セクシュアリティの権化である「脚」を意味し、「脚」とはbetween the legs(両足の間・性器)というように、性器をささえる2本の柱だからである。そしてハイヒールは、その「脚」をさらに際立たせる。

 女性のセクシュアリティは男性への攻撃性と、窃視症的な視線によって自己のセクシャリティを確認し性の自己言及性をたかめるという側面が当然あるだろう。

 ハイヒールは男性への攻撃性という面だけではなく、歩行時の足元をグラつき不安定にさせることで、弱き性という振るまいを演出し、庇護を誘発する。つまりエスコートしやすくさせるという一面をもっている。ハイヒールはセクシュアリティとして、このうえない近代の装置であり、女性の武器なのだ。

 ハイヒールに関しては一部でフロイト的な分析として、ヒールの印象は強力な男根象徴とされ、極一部男性の性的倒錯者のマゾヒスティックな連想信号でもあるとされる。それら矛盾する要因の結果、一部の女性ではハイヒールについて強い愛好・憎悪を持つことがあるようだ。例えばフィリピンのイメルダ・マルコス*1や、ルーマニアエレナ・チャウシェスク*2はハイヒールの膨大な蒐集で有名であった。

 またハイヒールは、セクシュアルかつフェティシズムな部分をもつがゆえに直接的な性行為とも深く結びついている。西洋中世あたりからカストリ誌の挿絵として、さかんに描かれるようになったエロティック・アートに登場する女性が靴を履いている場合は、その多くがヒール靴である。また、日本の春画でも女性が履物を履いている場合の多くが高下駄である。

 フェミニストの中にはハイヒールが男性による女性の動作を束縛しを圧制する道具であると考える人もいる。確かに、最初は汚れ除けの役割で誕生した履物であるが、纏足のように男性側から押し付けられた美意識を付与している側面もある。

 私は、自己で選択して履きこなせば、先に記したとおり女性をより魅力的にしてくれる心強いアイテムであると考えている。

 

4.形状の発展

 ハイヒールは時代とともに新たな形状のものを生み出してきた。実用性を考え変化したものや、アーティスティックにデザインされたもの等、様々な形状のハイヒールが存在する。ここではそれらのハイヒールについて一部ではあるが述べようと思う。

  

ウェッジソール:ウェッジヒールとも言う。かかと部分がつま先より高く、土ふまずの部分がへこんでいない物のこと。「くさび型の靴底」という意味。フェラガモの創始者サルバトーレ・フェラガモが、第二次世界大戦中にコルクなどを材料にして作ったのが最初である。女性が履いたまま作業が出来るように、安定感のあるこの形になった。

バレエ・ブーツ:1980年代に登場し、一時日本でも流行したバレエ・ブーツはものすごくかかとが高く、着用するとまるでバレリーナがポアント(つま先立ち)したかのような状態になる。

ヒールレス・シューズ:アントニオ・ベラルディが2007年に発表し、翌年にヴィクトリア・ベッカムが履いたことで有名になったものだが、かかとが宙に浮いているという形状になっている。デザインしたベラルディ氏によれば「ちゃんとバランスが取れる」ということだが、医療関係者によると、日常的に履いていると背骨やひざに損傷を起こす可能性があるとされている。

 

 ハイヒールの形状の変化は、常に美しくありたい(作業中でさえも)という意識や、新しい美的感覚を取り入れたいという願望を表していると考える。

 しかし、ハイヒールは美しさと引き換えに苦痛を強いられる諸刃の剣である。ハイヒールを履いた足にかかる負担は決して少なくない。ヒールの高い靴は、常につま先に体重が集中され腰への負担も大きくなり、足の神経が圧迫され、O脚や外反母趾を招く可能性がある。ヒールが高くなると膝に重心がきてしまいO脚が酷くなるどころかX脚U脚に繋がる事も有り得る。人為的に足骨を窮屈に曲げているのだから、そうなっても無理はないだろう。そのため、ハイヒールを履くとき、自分に合ったサイズ・形・高さのものを選び、正しく歩くことを心がけてほしい。

 

5.ハイヒールのブランド力 

 熱狂的なファンをもつハイヒール・ブランドは多数ある。フォルムの美しさ、履きやすさ、脚がキレイに見えるか、など、ブランド独自のデザインに対して拘りをもつ女性が多く存在しているからだ。

では、ハイヒールに定評ある代表的な数ブランドを紹介していこう。

 

Jimmy Choo:元イギリス版VOGUEのエディター、タマラメロンが靴職人ジミーチュウと設立したブランド。 アカデミー賞のレッドカーペットで大女優たちがこちらのハイヒールを履いていることでもおなじみ。 華奢で高いヒールであるにもかかわらず、歩きやすいと評判。ワーキングマザーが靴職人と力を合わせて創りだしているだけある。

Christian Louboutin:パリ店オープンから20周年を迎えた、レッドソールでおなじみのクリスチャンルブタン。 少年の頃からハイヒールのイラストに魅せられ、1992年にパリに路面店1号店をオープン。 繊細でフェティッシュなデザインに世界中の女性が魅せられている。

SERGIO ROSSI :父もイタリアの高級靴職人のサラブレット。 幼少の頃から靴作りに親しんできた彼が作り出すのは、「身体の一部」であり「美しい脚を完成させるための重要な要素」となる靴。1966年創業。日本人の足と相性が良いそう。ビーズの装飾が美しく。まさに職人技。

Giuseppe Zanotti:「靴作りへの情熱」は、その制作過程すべてを自社工場で行うところに現れている。 形にもよるが、ヒールがかなり内側(土踏まず側)につけられていることが多く、そのため高いヒールでも履き心地が良い。 日本で発売される靴用の木型はアジア仕様にしていることも、 靴への、それだけではなく、靴を愛する女性たちへの愛情のように感じられるのは私だけではないと思う。

Manolo Blahnik:人気ドラマ『SEX and the CITY』の主人公が偏愛していることでおなじみのマノロブラニク。 意外なことに、初め舞台セットのデザインを手がけていた彼のデザイン画に描かれた靴の絵を見たVOGUEの編集長が、彼に靴の世界を勧めたのだった。 その編集長に感謝している女性は世界中に数えきれないくらいいることだろう。デザインは巧みに計算されていて、足を締め付けないようになっているそう。

Ferragamo:グログランのリボンをメタルプレートで止めた「ヴァラ」が、大人気のサルバトーレフェラガモ。 上品で、お嬢様を思わせるデザインが多い。 多くの女性から慕われる理由は、そのデザインもさることながら、その履き心地の良さもある。「シャンク」と呼ばれる金属のプレートを土踏まずの部分に入れることにより、体重を分散して安定感が得られ、それにより、この上ない履き心地が生まれるのだそうだ。

BALLY :最近ではバッグが有名だが、女性用のシューズブランドとして創業したバリー。 パリで美しいシューズを愛する妻のために買い求め、それを元にシューズブランドを始めた。

Castaner :カスタニエール。200年の歴史を持ち世界各国でラグジュアリーなエスパドリーユを展開している。200年の歴史を持つエスパドリーユのブランド。 エスパドリーユは、元々、スペインの農民がはいていた靴だった

 

 定番のハイブランドをいくつか紹介してみたが、そう気軽に買える値段のものではないだろう。しかし、やはりいいものは長持ちし、なにより美しい。履きやすさ歩きやすさを考えても、ハイブランドは安心だ。

 また、高価なハイヒールは、履いていると無意識にでも足元に一段と気を配って動くため、より一層女性の所作を美しくしてくれる。理想のプロポーションだけでなく、優雅さを与えてくれる上質なハイヒール。それは女性の永遠の憧れではないだろうか。

 

6.ハイヒールと歩行

  どれほど素晴らしいハイヒールを履いていたとしても、美しく歩けない、ましてや立てないのなら、なんの意味もないだろう。ずるずると踵を引きずったり、うるさ過ぎる耳障りな足音を出したり、ロボットやペンギンのような歩き方しかできないのは、ひどく不恰好でみっともない。スニーカーで普通に歩いている方がずっと魅力的だ。

 しかし、ハイヒールでの歩行は難しい。先に述べたとおり、足に負担はかかるし不安定で、普段使わない筋肉を使うからだ。誰しも最初から完璧に歩けない。美しい歩行は、練習と慣れによって身に付くのだ。

 ここではハイヒールでの歩行について様々なものを取り上げてみようと思う。

 

ハイヒール・ウォーク:姿勢は糸で吊るされているイメージで、体をまっすぐにする。猫背や前傾姿勢にならないように気をつけ、1本の線上をつま先をやや外側に向け、土踏まずで線を踏むようなイメージで歩くと、きれいに見える上に疲れにくく、底も減りにくくなる。ひざを曲げないように気を配りながら、腰から歩くようにする。腰で歩くことで中心がブレず、ヒザを曲げないことでキレイに見える。そして、つま先とかかとを同時に着地させる。前から歩いてくる人に靴の裏を見せないように 歩くのがコツである。歩き方をキレイに見せるポイントは体の中心をずらさないようにすること。親指に力を入れて歩くと、フラ つかず安定感がよくなる。内くるぶしを前に見せて歩き、後ろ足のひざ裏がまっすぐに伸びるように意識する。さらに後ろ足も意識することで、ヒップラインも上がり、歩き方そのものがキレイに見える。

モンロー・ウォークマリリン・モンローの特徴的な歩き方。モンローは映画『ナイヤガラ』でモンローウォークをはじめて披露する。お尻を通常よりも大きく左右に振ってセクシーに見える歩き方を「モンロー・ウォーク」という。この独特な歩き方の秘密は、彼女が意図的に左右のヒールの長さを変えていることにあると言われている。おおよそ、左のヒールよりも右のヒールを4分の1インチ(6㎜)程度短くしているとされる。モンロー・ウォークは20世紀のセックス・シンボルである。

モデル・ウォーク:キャット・ウォークやランウェイ・などとも呼ばれている。基本は視線の先を前方に定め、軽くアゴを引き背筋を伸ばして歩くこと。このとき腕は自然に振り方の力を抜き、体重は左右交互にかける。ポイントは腰を支点として重心を前へ押し出し上体を前に移動し、体重のかかっている方の脚の膝を絶対に曲げこと。両脚の内ももがすれ合う感じで前後に軽く交差しながら踵には体重をかけないようにするのが重要だ。

 

 ハイヒールは、動きの中で見ると、より一層魅力的なアイテムだ。しぐさを伴うことで女性の脚をさらに美しく、妖艶に見せることができるのだ。

 歩行の次は、より激しく動くことが要求されるダンスである。社交ダンスはハイヒールを履いて行われるが、ハイヒールが欠かせない、魅惑的なダンスがアルゼンチンタンゴである。

 

アルゼンチンタンゴ:ハイヒールを履くと腰の位置も高く、体も前傾になり、タンゴのなかで抱擁がしやすくなる。 それに加えて、女性のフォームが上品になり、男性が手をとってリードしたくなる、手を携えたくなるような華奢さが生み出される。アルゼンチンタンゴでは、「飾り足」の使い方がポイントだ。「飾り足」とは、軸足ではない方の脚のこと。踵が高いことによって、脚の現れ方や、その映り方は断然違ってくるのだ。この飾り足によって、ダンスに豊かな感情が生まれるのである。

 

 社交ダンスだけでなく、ハイヒールを履いて踊るダンスは現在増えている。また、ハイヒールを履くことを売りとしているダンスグループなども多々存在する。ハイヒールのセクシュアルかつフェティシズムな部分をユニセックスに表現した男性ダンスグループKAZAKYは、トレードマークでもあるハイヒールにフェティッシュなコスチュームとセクシーでジェンダーレスなパフォーマンススタイルが世界に注目され、旋風を巻き起こした。

 

7.ハイヒールと女性を取り巻く問題

 女性のフォーマルスタイルは、ヒール靴を履くことが当然視されている。ノーヒールの靴を履いていたためにパーティー会場やレストランに入ることを拒否された女性の話は枚挙にいとまがない。*3

 ビジネスの場でも、女性の靴の規定がヒール靴しかない会社は多い。スーツに合わせる靴も、女性はほぼヒールという選択肢しかないのが現状だ。ヒール靴を履いていないばかりに「常識がない」という烙印を押されることさえある。

 先述してきた通り、ハイヒールは歩行に少なからず危険が伴い、履いている人の脚全体にダメージを与え、ときにその蓄積したダメージが健康的被害に及ぶこともある履物である。

 ハイヒールは「オシャレ」のための靴だ。自分の美意識のために自ら選択して身につけるモノである。身だしなみを整える必要のある場で、相応の華美さは必要だろう。しかし、女性が苦痛や危険を伴う選択を押し付けられている現状は打開されるべきである。

 

おわりに

 古くから人々に熱愛され、ときには憎悪されてきたハイヒール。その魅力は様々な要因の上に成り立っていた。相反する要素を孕んだ身につける嗜好品であるハイヒールが、これからも多くの人の「なりたい自分を演出する心強いアイテム」として発展していくことを願う。

 

 

参考文献

 岸本考『靴の事典』(2000)文園社

Ed. Jim heimann『50s FASHION』(2007)TASCHEN

中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』(2011)文藝春秋

『世界の性愛学』(2013)綜合図書

フロイド 翻訳:安田徳太郎、安田一郎『性と愛情の心理』(1955)角川文庫

上野千鶴子「後期資本主義とセンシュアリティ」

亀井俊介 『アメリカでいちばん美しい人―マリリン・モンローの文化史』(2004) 岩波書店 

Web 

file242「ハイヒール」|NHK 鑑賞マニュアル 美の壺

http://www.cyzowoman.com/2010/07/post_2117.htll

「映画「私が靴を愛するワケ」オフィシャルサイト」http://www.alcine-terran.com/shoes/

ヒール靴の正しい歩き方 靴底減らず、疲れにくい :日本経済新聞

Kazaky Japan Homepage