舞台『モノノ怪 〜化猫〜』感想

舞台『モノノ怪 〜化猫〜』感想

 

 

 原作アニメ『モノノ怪』が好きで観に行ってきました。

 めちゃくちゃ良い席で薬売りさん目の前で観れたので最高だった。 衣装のお着物とプロジェクションマッピングの演出も綺麗。原作の「化猫」が重い話なので、観終わって帰宅した今も余韻が残っている…。

 キャラクターの再現性と、衣装のお着物の美しさ、幻想的なプロジェクションマッピングが素敵で、とても楽しめました!

 チケット取ってくれて一緒に連れてってくれた友人にマジ感謝。

 性加害が主軸になる話で、フラッシュバック起きそうだと思うシーンはありました。重いテーマな分、コミカルな演出が多めに入れられてたり戦闘シーンの演舞の尺が長いのはバランス良くて楽しかった。

 あと薬売りが本当に格好良かった。

 

 

※ネタバレ有 (原作アニメにも言及)

 

 

 

 

 

  アニメシリーズのファンであり、舞台観賞が好きなので楽しみにしてた。

 キャラクターの再現性も高く、衣装も綺麗でとても楽しめた〜。

 シンプルな舞台装置が好きなので、あの空間でお屋敷の空間を表現しているところにワクワク。舞台上のプロジェクションマッピング使用法も面白かった。

 演者の皆さんの演技も勿論素晴らしかった。

 

 私はアニメ・漫画などのコンテンツにそんなに詳しくない(何作かは読んでいるし好きな作品もある)のだけど、『モノノ怪』『ayakashi』はとても好きな作品だったので、こうして再び新しい形で観ることが出来て嬉しかった。

 2.5次元舞台(と呼ぶのが正しいかどうかわからないですが、誘ってくれた友人がそのように説明してくれました)の観賞も初めてだったが、キャラクターがそのまま肉体を得たようで感動した。なるほどハマる人がいるのも頷ける。

 

 原作のエピソードと同じく、本筋として「性加害の被害」が主軸となる物語だった。

 重苦しい気持ちにならざるを得ないため、コミカルなシーンが多く入れられていたり演舞のパートが長めに取られているのがバランス良く、落ち込まずに楽しめた。

 最後のシーンは原作と変えて「もう出て行ったよ」という、被害者の魂が救済されたことを明確にしていたこと、とても良い改変だったと感じている。

 その上で、弥平に「セクハラ」をされた加世が腕を振り上げて怒ったとき、薬売りが「これは手厳しい」と言い、加世の怒りを「やりすぎ」だと感じているかのように演出されていることには不信感があった。

 加世に弥平が日常的に「セクハラ」しているという点は坂井家がどういった環境なのかを暗示する場面なので必要だが、目の前で着物をめくったり体に許可なく触れようとするといった性的加害の瞬間を目撃しているはずの薬売りが、被害者である加世の怒りを「手厳しい」と評し、そんなに怒らなくても良いのではないかという趣旨の発言をしたことには少なからずショックがある。

 女性を物扱いしてきた坂井家の男性たちがセクハラ行為に「些細なことなんだから怒るなんて大袈裟だ」と言うのはキャラクター的にも理解できるが、薬売りは坂井家で過去に何があったのかを知ったとき確かに怒り同情しているはずなので、目の前で起きたセクハラに対してはやった側の弥平を嗜めるくらいが自然であると思い、また、そうして欲しかったと考えている。

 アニメでは、この弥平によるセクハラシーンは薬売りの見えていないところで起き、薬売りは加世による反撃のみを目撃したことから、「手厳しい」というセリフは加世が弥平をやたらに嫌っていると薬売りが勘違いしたことで出た言葉だった。

 本舞台では演出の都合上、薬売りの目の前で一連の行動が行われているので、それならば薬売りは加害への抵抗を「手厳しい」(やりすぎ)等と評すべきではなかったのではないかと思う。

 

 最近では、作中で暴力や加害を描いている作品、特に性加害をテーマにした作品で、鑑賞者が観賞中に意図せずフラッシュバック(PTSDの症状です)を起こさないよう冒頭などで注意喚起を促すことが多くなってきた。

 私は原作を知っていたので本舞台で何が表現されるのか知った上で観賞したが、性加害や暴行の瞬間を目撃することを知らずに初見あるいはネタバレを避けて観にくる方も中にはいらっしゃるはず。

 目を覆いたくなるような悲惨な暴行/性暴行のシーン(物語上必須)がある以上、観賞中にフラッシュバックを起こしたりパニックになったりする被害者の方やサバイバーの方が出ないよう、冒頭での注意喚起あるいは明確な注意書きなどが今後あれば良いなと思うなど。

 

 見せ場としては、薬売りの抜刀時の姿である通称「ハイパー」をプロジェクションマッピングで魅せる演出が特に良かった。ハイパーをどう表現するのかな気になっていたので、こうきたかと感動した。

 ハイパーになると薬売りは褐色肌(通常時と色相が反転したようなキャラデザ)になるが、ここをブラウンフェイス/ブラックフェイスにせずどう表現してくれるのか期待していた。なので、肌の色を塗るのではなく映像を投影することで幻想的に変身を表現したことに安心したし、本舞台の選択を支持する。

 ブラウンフェイス/ブラックフェイスは人種・民族差別の歴史と差別表象と密接に関わっているため、舞台上での表現でも倫理的問題が問われるということを自覚されての判断だろう。舞台空間を離れてそれ単体で存在してしまう場合の問題を把握なされての、ハイパー状態のグッズを販売しない・サイト等でビジュアルを見せない、という決定も英断だと思う。

 今後もし続編などで、生身の演者(荒木さん)がハイパーになることがあっても、ブラウンフェイスは選択しないで欲しい。

 加世もアニメでは褐色肌で描かれているが、本舞台では演者の肌色から違和感なく日焼け(tan skin)の範囲で表現されていて、原作再現性と現実社会での文脈(生身の役者が演じることでどうしても生じてしまう)をバランス良く取捨選択されていて、これは上手い実写化だ! と感じた。

 

 光を使った演出はどれも印象的で良かった。

 天秤を配置するシーンや奥の間の襖を開けるシーンなど、演者の動きと映像が連動している演出が特に好き。

 私は眼病を患っており強い光を見ることが出来ない(見えない、見てはいけない)ため、暗転時や化け猫の赤い目が結界の外を這い回る演出などの観客席にライトが向けられる演出では何が起きているのか見ることが出来なかったのだけど、セリフが聴き取れたので把握できた。

 セリフを音響で流してくれる舞台は良いな。声を張るシーンでなくてもセリフが聴き取れるので。

 ライブや舞台に光の演出が付きものなのは理解しているし、観客席を照らす演出も臨場感があって良いと思う。

 けれども、眼病だけでなく眼の色素の薄い人もいらっしゃるかと思うので、光に過敏な人が対応できるよう、予め「強い光や点滅を伴う、観客席側に光が行くことがある」ということを券売時に加えて開園時にも伝えてくれたらより安心して観劇できるなと感じた。

 

 とても楽しかったのて、是非続編が観たい。

 舞台ならではの幻想的で怪奇的な演出が観られる舞台版オリジナルエピソードなども素敵かもしれない。客席の通路を通る演出が多いのも魅力的だったので、もし続編があれば継続して頂きたい!

 

 素敵な舞台でした。観られて良かった。